062 96.09.07 「ヒマワリの壁の向こうから」

 カウフマン・マーク・アンドリュウさんは、神奈川県相模原市在住の米国人で、25歳です。職業は神奈川県立弥栄西高校の教師です。私はアンドリュウさんには会ったこともありませんし、昨日まではまったく知りませんでした。
 ところで、米国人ってなんだろう。私はこの3文字の漢字が意味するところがどうもよくわからない。正直に言うと、さっぱりわからない。あ、どうでもいいことですね。失礼しました。
 それでまあ、新聞の社会面の記事に出ていたので、彼の存在を知ったわけです。こういうところに登場するひとは、とてもよいことをしたか、ちょっと悪いことをしたか、とても悪いことをしたか、ま、だいたいはこのうちのどれかということになってますね。ちょっと良いことをしただけじゃ誰も褒めてくれませんが、ちょっと悪いことをするとたちまち非難糾弾のアメアラレ。そのような展開が待ってます。アンドリュウさんは、ちょっと悪いことをしちゃったんですね。大麻取締法違反(栽培)容疑で逮捕されちゃったんです。神奈川県警相模原署は、高さ2.1~2.4メートルに成長した大麻7本を押収した模様です。大麻の長さを測る、そういう仕事もあるのだなあ、と感慨に耽ってしまう私なのでした。
 アンドリュウさんがこの大麻をどこで栽培していたかというと、なんと市民農園なのだそうで、あらまあカウフマンちゃん、なんてお茶目なんでしょう。われらがカウフマンちゃんは、市民農園の1区画(約20平方メートル)を借り受けて、しゃあしゃあと非合法活動に精を出していたというんです。もうナメきってますね、カウフマンちゃんは、地方行政を。学ばなければなりません。
 カウフマンちゃんもそこはだてに教師をやっていたわけじゃないようで、すこしは工夫をしたんですね。ヒマワリを植えたっていうんですけどね。大麻の周囲に。ヒマワリを。ヒマワリを植えたんですよ、われらが愛しのカウフマンちゃんは。
 市民農園でヒマワリはあんまり栽培しないんじゃないかと思いますが、ふつう。カウフマンちゃんの故郷サウスカロライナ州ではヒマワリを食用にするのかも知れません。ま、カウフマンちゃんの故郷がどこなのかは、私、知りませんが。
 ヒマワリがどんどん伸びて大麻を覆い隠してくれるだろう、ってのが、カウフマンちゃんの目論見だったようです。ヒマワリのファイアウォールをつくろうとしたもののようです。サンフラワー、ファイアウォール。まあ、わかんなくはないですけどね。甘いですね、カウフマンちゃんは。
 目論見、という単語が過去の事象の動機説明として登場すると、多くの場合、その意図は失敗に終わったという事実を暗示しているってことになってますが、カウフマンちゃんもあえなく御用になっちゃいました。カウフマンちゃんの思惑は外れてしまったんです。ひとが知恵を振り絞ってやったことは結果的にたいがい間が抜けてますが、愛すべきわれらがカウフマンちゃんもやっぱりおまぬけなのでした。
 あのね、カウフマンちゃん、向日性の植物は暗がりを脱しようとしてどんどん伸びるものなんだよ。
 まわりの区画を借り受けた方々は、ナスキュウリトウモロコシトマトなどを植えて悦に入ってたわけです。食糧を収穫するために市民農園を借りたわけです。
 そこにヒマワリ。なぜにヒマワリ。カウフマンちゃんの区画は、もう注目のマト。好奇の視線で眺めていたところ、ヒマワリの向こうになにやら見たこともない植物が。通報。当局へ通報。
 あわれ、ミスタ・カウフマン・マーク・アンドリュウは、容疑者へと変貌してしまったのでした。
 いいよね、こういうひと。初めの一歩をあらぬ方に踏み出した結果、予想もしなかったゴールに辿り着くひと。カウフマンちゃん、送還されちゃうのでしょうか。
 しょうがないですけどね、ま、そんなに悪い奴じゃあないと思いますよ、なんとなく。ちっとも根拠、ないですけど。だって、カウフマンちゃん、おまぬけなんだもん。

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