021 96.05.07 「駄洒落自動契約機」

 あらゆることがそうなのだけれど経済についてもこれまた門外漢なので、その業種をどんなふうに呼んでいいのかわからないわけです。貸金業、っていうのかな。そんな気がするんですけど、自信がないです。プロミスとかアコムとか武富士といった企業のことですね。ナニワ金融道をちゃんと読んでおけばよかったなあ。サラ金という死語もありますが、どちらかといえば高利貸しという死語のほうが雰囲気が出るので、ここでは高利貸しと称してみます。怒られそうだなあ。怒らないでね。私は単に頭が悪いだけで、悪気はないんです。根はいい奴なんです。あ、いやいや、あんまりいい奴じゃないかもしれないんだけど、許してお願い。
 このゴールデンウィーク(以下、「ゴウ」と略す。)の新聞紙上で、やけに高利貸しの広告が目立ったように思うんですが、いかがでしょうか。銀行もお休みなのでチャンスなんでしょう。よんどころない事情でとつぜん現金が必要になってしまうひとは、どうしたって、いるからなあ。
 そこで自動契約機の登場です。銀行のATMのような面構えをしていながら、借金の契約をこなしてしまうスグレモノです。誰にも会わずに現金を借入することができる、と、各社がんばって宣伝しています。カードが発行されちゃうんです。受付の女の子に自らの貧相なフトコロ事情を吐露する必要がなくなったわけです。プライバシーが守られるんですね。もちろんプライバシーの保護なんて幻想なんですが。
 この、自動契約機が笑えるんですね。名前が。ひとつひとつをとってみれば他愛ないネイミングなんですが、まとまると変なんです。高利貸しによるダジャレの競演。私は、さっそく蒐集活動に没入したですよ。元気になってね山本晋也。
 困ったときはスポーツ新聞を読め、という先祖代々の格言に従って、私はスポーツ新聞を購入してきました。いやまあ、そんな家訓はないですけどね、スポーツ新聞の辺境方面を熟読しました。
 あるあるるる。高利貸しの広告が氾濫してます。採集結果は、こうです。いらっしゃいまし~ん、お自動さん、ひとりででき太、むじんくん、¥en結び、受付じょうず、ひタッチくん。これ、ぜんぶ、高利貸し機関が設置した自動契約機の名前です。圧倒されちゃいますね。そんなに、そんなに、そんなにも、ダジャレを言いたかったのか、高利貸しギョ~カイのみなさんは。私もダジャレは好きです。聞きますよ~、ウケつつ。
 よーろっぱ方面の言語がちらついてないとこに、まず好感を覚えますね。基本的にはどれもニホンゴを使ってる。ここまで出揃うと、いかにもなにかそれらしい背景がありそうですが、なんにしろ結果的には笑えるので私はたいへん嬉しいです。
 だからって、借りないけどね。
 たとえば銀行のATMが管轄銀行毎に固有名詞を与えられるという事態はありえないですよね、たぶん。やればいいと思うんだけど、やらない。やったら、不都合が多いから。汎用性という効能が崩れちゃう。
 その点、汎用性の呪縛から解放されてる高利貸し諸兄のセンスは冴えてます。ただ単に競ってます。ネイミングという最後のどうでもいい砦にこだわってます。いいなあ。みんな借りてやれよ、と、エンもユカリもないんですが思わずお勧めしてしまいます。変な名前ですけどね、幾多の会議を経てそのような命名に至った苦難の歴史があったのです。きっと。そういう名前じゃないと、誰も借金してくれないんですね。わかってます。わかってますとも。ま、勝手に解釈してますが。
 あ、しまったしまった。せっかく略したのに使ってないじゃないか。ゴウ。よし、これで義理は果たした。
 じゃ。(と、しんちゃんの物真似をしてみたのだが、わかっていただけただろうか。心配だ。わかってくれとは言わないが~、そんなに俺が悪いのか~。歌ってどうする、いいかげんにカッコを閉じろ。はい、閉じます、ぎざぎざハートのこもりうた~)
 ぎざぎざ、って、変な語感だな。ま、いいけど。

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