12月28日 梯子酒の夜
本日をもって今年の最終営業。今回の休日の巡り逢わせは、給与生活者にとってはありがたいのだろうが、私のような零細飲食店主には最悪だ。
つつがなく閉店し、常連客と飲みに出かける。年末恒例の行事だ。
三軒ほど梯子酒。みんな普段は口数が少ないくせに、こういうときはちゃんと饒舌になる。全員の総意として、カラオケを徹底的に避け、女の子がつく店を無視する。
どちらかといえばむさくるしい中年男の集団が、おぼつかない足取りで練り歩く。
あまり誉められた光景ではない。
そろそろ夜が明けるかという頃、ひとりが喉が渇いたといって通りすがりの児童公園に駆け込んだ。水飲み場にしがみついて水を飲んでいる。私も彼のあとに並んで、乾きを癒した。
他の面々は、なんのつもりなのかジャングルジムに登り始めた。
私も最後から登った。鉄の棒が冷たくて難儀する。
旗を立てよう、とひとりが無茶を言いだした。登山隊のつもりらしい。コートを脱いで振り始めた。無人島の遭難者にしか見えないのではないか。
カラスにさえも無視されている。
やがて、ビルの間から朝陽が昇ってきた。なかなかに、綺麗な眺めだ。
中年登山隊は歓声をあげて拍手した。