12月21日 試行錯誤の夜
体調は、ほぼ回復した。いつにもまして忙しい土曜日だったが、日付が変わる頃には常連客だけとなった。バーボンを飲っている二人の了解を得て、私はマルガリータをつくりはじめた。
予期せぬ風邪に中断されていたが、まだ宿題は片付いていない。
熱に浮かされていたときに閃いた着想がある。ライムジュースを控えるかわりに、他のジュースを補ってみてはどうだろうか。
パイナップルジュースは予想通り破綻した。ほんの少し入れただけでも、一口含んだだけで、たちまちその存在が発覚してしまう。
グレープフルーツジュースもうまくいかなかった。存在は感じられないが、ライムジュース自体の品質が変容したような味になってしまう。
レモンジュースで成功に至った。全体が引き締まる。量を加減して試した結果、三滴ほど絞るのがベストだとわかった。それ以上入れると、主張をはじめる。
次はスノースタイルだ。粒子の大きさが異なる塩を三種類用意して飲み比べた。歴然というほどではないが、確かに飲み口が違う。マルガリータの場合には荒い塩の方が似合うようだ。
今までのレシピでつくったマルガリータと新作を並べ、常連の二人に試してもらった。だが、二人とも従来作がいいという。
どうしたことか。私は首をひねった。劇的にうまくなっていると思うのだが。
二人は、私をからかう。
思い当った。私は、二人に水を飲んでもらった。バーボンを洗い流してもらうのを忘れていたのだ。しかるのちに、もう一度試してもらった。
今度は満足のいく回答が得られた。
ひと安心。