12月19日 看病される夜
ホット・エッグ・ノッグの効むなしく、依然として風邪にまみれている。
すっかり気弱になり、閉店後、麗子に私の部屋まで来ていただく。
まず、叱られた。
なぜ店を開けるのか、お客さんにうつしたらどうするのか。病人に、麗子は容赦ない。
それは、わかっている。飲食店経営者としてあるまじき行為だ。しかし、店を休みたくはない。
私としても鬱屈している部分だ。避けて通っていただけに、正面きって指摘されるとますますしょげかえってしまう。
風邪をうつされる人は心身が弱っており、流行の折、私にうつされなくても、他の誰かにうつされるのではなかろうか。そう屁理屈をこねようとしたが、更に叱られそうなので、胸の内に納めた。
明日も開けるつもりなのかと、麗子が聞く。
私はうなだれ、治ったら開ける、と答えた。敗北は認めるが、少しは反抗してみたい。
治ったらよ。麗子が失笑しながら念を押した。
その後、寝かしつけられた。半覚醒状態で、きびきびと動く麗子を眺めていた。おかゆをつくってくれるのはありがたいが、部屋の掃除を頼んだ覚えはない。訴えようとするが、声にならない。私の額に載せた濡れたタオルをこまめに替えてくれるのはありがたいが、その度に自分の額を押し当てて私の熱を計るのはやめてほしい。抗おうとするが、身体が思うように動かない。
やがて、眠りに落ちた。
目覚めると、麗子の姿はなかった。まだ夜は明けていない。さしたる睡眠時間ではなかったようだ。のそのそと布団を這い出して、最近の日課を励行する。
今、いきなり、麗子にどやしつけられた。
コンピューターなんかで遊んでる場合じゃないでしょ。と、いうのがお怒りの御主旨のようだ。
帰ったのかと思ったら、近所のコンビニエンスストアに買物に行っていたらしい。
怖いので、おとなしく布団に舞い戻ることにしよう。
目覚めたときに、快癒しているとありがたいのだが。