12月6日 飲み過ぎた夜
午前一時を回った頃、珍客が現れた。
久し振りだ。私はとりあえず、いま乗っている車の名を尋ねてみた。哲也は、高価な恥しい車の名を口にした。相変わらず羽振りがよさそうだ。
私は、やたらとエンジン音がうるさい中古のサニーを転がしていた頃の哲也を知っている。その助手席に、私は乗っていた。二人とも、少なくとも人に誉められるようなことはしていなかった。
まだバーボンは嫌いになってはいないかと聞いたところ、まだバーボンしか飲めないという。私はしばらく考え、アーリータイムスをボトルごと与えた。哲也はあっけにとられた表情を見せ、やがてにやにやとした顔で勝手に飲りだした。
あとはほおっておいた。他にも客がいる。哲也は、ひとりでおとなしく飲んでいた。
やがて最後の客が帰った。私は表のディスプレイの灯を消した。
すでに半分になっていたアーリータイムスを自分のグラスに注ぎながら、私は、なにか話があるのか、尋ねた。
話なんかねえよ。哲也は苦笑した。話がなきゃ来ちゃいかんのか、顔をみたくなっただけだ。
私は謝罪した。つまらないことを尋ねてしまった。
そのあと、三時間ほど、どうでもいい話をした。
帰りがけに哲也が代金を払おうとしたので、今度は私は苦笑した。いくらカネが余っていようが、哲也から代金を頂く気にはなれない。哲也は謝罪した。
飲みすぎた。気持が悪い。