11月26日 忙しい夜
昨夜とは一転して忙しい。騒がしい団体が入れ換わり立ち換わり、やって来る。
三次会、四次会で、会社員が数人で訪れると、私は忙しくなる。彼等はピッチが早い。フル回転を強いられる。味わって飲んでくれないから寂しくはあるが、そういう客がいなければ利益が上がらないのも確かだ。
静かな時間を過ごしたい常連が、そっと席を立つ。
申し訳ないが、仕方がない。穏やかな時ばかりを過ごしてもいられない。
微かに顔の筋肉を動かして謝罪の表情をつくりながら、常連客を見送る。苦笑を眼差しに滲ませながら、彼等はひっそりと出て行く。
他にも居場所は確保しているだろう。自分に、そう言い聞かせてみる。
わずかに、苦痛がある。
趣味で開いている店ではない。私が生活していくための店だ。頭ではわかってはいるが、馴染めない。
いつまでたっても、大人になれない。
希釈した愛想笑いを頬に貼り付けて、酩酊した会社員たちの注文に応える。
ひとりでいればいい客なのかもしれないが、ふたり三人とつるむと、どうにも騒々しい。もちろん、いい客、とは、私の自分勝手な見解に過ぎないが。
昨夜の低調を一気に挽回する売り上げを納めて、店を閉めた。
持て余した気分を解消するべく、麗子を私の部屋に呼び出す。セッションしようとするが、こちらの状態を察したらしく、うまくはぐらかされてしまう。
結局、焙じ茶を啜りおかきを噛りながら、他愛ない話をして朝を迎えた。
妙な気分だ。