11月21日 バカップルの夜


 私の目前で平然とキスをするくらいなのだから、屋外でもやはり平然と同様のふるまいに及ぶのだろう。どちらもまだ若い。
 どういうつもりで、こういう場違いな店に足を踏み入れたのだろう。

 俺はドライマティーニ、連れにはブルー・マルガリータ。と、言う。なにかの雑誌で勉強してきたらしい。思いだすような言い方で、微笑ましい。
 連れのお嬢さんにはレモンジュースを多めにしてライトにつくった。すでにもう顔が真っ赤で、身体が揺れている。

 これ以上飲ませたら、このあとの密室でうまいこといかないような気がするのだが。バーでも場慣れた君の頼もしさは彼女にも伝わっただろうから、早いところ切り上げた方がいいよ。
 もちろん、そんなことは口にしない。
 黙って、ふたりにカクテルをさしだす。

 青年がカクテルについて講釈を始めた。お嬢さんは、うっとりとそれを聞いている。面白い講釈で、青年説によるとマルガリータがウオッカベースということになる。マティーニのオリーブは食べないのが通だとも語る。

 ふたりに、幸あれ。

 馬鹿馬鹿しくなったので、閉店後、麗子を呼び出し、ワンセッション。


扉へ | 次の夜へ