008 95.11.17 「もう、タウンページったら」

 ちょっと必要があってタウンページという代物をひもといたりしたんだけど、ううむ、ひもとくという動詞は再生紙の本には似合わなかったか。だいたい、本と呼んでいいのかな。雑誌でもないし、まあとりあえず本ということで。
 この本には発見がありますね。情報のみが求められる本なんだけど、ふと気を抜いて本来の目的を忘れちゃったんですよ。なんのために開いたのかを忘れちゃいまして、耽溺してしまったわけです。なにか調べることがあったはずなのに、しげしげと熟読してしまったんですね。まぬけ。
 索引というやつですか、これ、なんか変です。ここまで細分化するのかっ。私、嬉しくなっちゃいました。いやはや、世の中にはいろんな業種があるもんです。圧倒されました。
 きわ物、というものが商売として成立していたとは知りませんでした。岩波国語辞典によると、「きわもの(きは‥)【際物】ある時期のまぎわにだけ売れる品。例、正月の門松、三月のひな人形。また、一時的な流行・人気をあてこんで作った品物、また脚本・小説など。」となってます。後者の意味しか知りませんでした。すみません。索引に従ってそのページをめくると、あらま、たしかになんたら人形店が掲載されていました。人生は、思いがけないところで知識を増やせるもんですね。キワモノって、よくない意味の言葉だとばかり思ってました。由緒ある言葉だったんだなあ。ごめんなさい。
 「香道教授所」なんていうのもありました。いかなる業種かはよくわかりません。どんなお香でも即座に嗅ぎ分ける犬のような鼻を持ったお師匠さんが、香道初段とかを授けてくださるんでしょうか。「配ぜん人紹介所」という、なにやらうさんくさいのもありました。あくまでも想像ですが、これはちょっとあやしいです。いや、べつに、根拠はないすけど、あやしいと思うっす。
 このように、NTTではあくまで土着の言語で表現しようという努力を重ねているみたいで、このへんが笑えるところです。「ええと、手頃な配ぜん人紹介所はないかなあ」とつぶやきながら、電話帳をめくるひとはいないもんね。
 一方、似たような薄っぺらい紙を使ってキオスクあたりで販売されている求人情報誌がありますね。そこではきっと、「シーズナブル・ドール・メーカー」「マスター・オブ・フレイヴァー」「デリバリスト・イントロデューサー」なんて言葉が横行してるんでしょう。ま、どっちもどっちなんですけど、立場が変われば表情も変えなきゃいかんということなんでしょうね。
 私は茨城県南部版のタウンページを見て書いてるんですけど、地域によってはもっと特異な業種があるんだろうなあ。その地方ならではの業種というのが。知りたいなあ。都会は都会で、これまた謎めいた業種があるんだろうなあ。気になるなあ。
 ところで、タウンページは昔は職業別電話帳とかいってたんだけど、その頃からずっと掲載されていない職業がありますね。いかんです。いかんと思います。サラリーマンや主婦をないがしろにしてはいけません。このひとたちは、まとまって怒るとこわいです。うじゃうじゃいます。載せてあげてください。そんな業種はないなんて言わないで、どうかひとつお願いします。
 ついでに、家事手伝いのひとなんかも載せてください。この需要は絶対あると思うな。

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