1月3日 マーガレットの夜
新聞によって、その名を初めて知るバーテンダーの死が伝えられ、感慨を覚える。
フランシスコ・モラレスが、エルパソで昨年十二月三十日に七十八年の生涯を閉じたと、ロイター共同が伝えている。
セニョール・モラレスは、メキシコでマルガリータを考案したという。
私の部屋にもカクテルをつくるための多少の設備が整っている。なんとなくつくってみたくなり、マルガリータをふたつこしらえた。
麗子とともに、セニョール・モラレスのために乾杯した。
もっとも、マルガリータの発祥にはもうひとつの説があり、ロサンジェルスにおいてジャン・デュレッサーなる人物が考案したともいう。カクテル・コンテストで入選したというから、こちらのほうが信憑性があるのかもしれない。
それぞれの説を比べてみると、セニョール・モラレスがつくりミスタ・デュレッサーがコンテストを機に世に広めた、といったところになるのだろう。
恋人の名をカクテルに名付けたのが、両者の共通点だ。
そんな話を麗子に聞かせながら、三杯ほどマルガリータを飲んだ。
麗子が、自分の名前のカクテルをつくってくれと、言う。あまりに遠回しの表現だったので、あやうく聞き逃すところだった。
それは、増長してはいまいか。
増長させている、ともいうが。